前回は、“シャリバテ”という登山用語について深掘りしてみました。
⇒シャリバテとは?シャリバテになるとどうなる?ならないためにはどうする?
登山中、シャリバテにならないために計画的にエネルギー補給をすることが大事なわけですが、山登りの途中や休憩時に口にする食べ物のことを“行動食”といいます。
今回は、どんな食べ物が登山の行動食に適しているのか、おすすめの食べ物を定番から伝統食、番外編まで幅広くご紹介していきたいと思います!
行動食におすすめの食べ物は?
登山の行動食としておすすめの食べ物は、
- 軽い
- 携行しやすい
- 日持ちする
- エネルギーに変わりやすい
- 歩きながら食べやすい
以上が理想です。
・・・が、結局のところ、エネルギー補給になれば何でもいいので、基本的には自分が好きな食べ物を持っていくのが一番!
どんなにエネルギー源として優れている食べ物でも、自分の口に合わなければ美味しく食べることができませんし、そうなると行動食を食べること自体が楽しくなくなり、エネルギー不足になってしまいます。
逆に、いくら自分が好きな食べ物でも、登山の行動食には向いていない場合も。
では、登山の行動食の一例を、定番から伝統食、番外編まで挙げてみますね!
定番の行動食
まずは、登山の行動食に適していると言われている定番の食べ物から。
定番となっているのには、それぞれ理由があるんです。
おにぎり
糖質の代表ともいえる定番の行動食は、何と言ってもおにぎり!
エネルギー源となる糖質を多く含む“ごはん”は、登山を続けるための運動エネルギーを作ってくれるもっとも身近な食べ物です。
ごはんをしっかり握ったおにぎりは、行動中に食べても崩れにくく、塩気で塩分補給ができる上、具材によってさまざまなバリエーションが楽しめるのもいいですよね。
とくに、“ごはん・梅干し・ごま・のり”という伝統的な組み合わせは、栄養面から見ても最強。
梅干しには、汗で失われたナトリウムと疲労回復を促すクエン酸が豊富に含まれています。
ごまはエネルギー源となる脂質やエネルギー代謝に重要なビタミンB1、抗酸化作用のあるセサミンのほか、鉄やマグネシウム、カルシウムなどのミネラルが豊富。
のりはミネラル分を多く含み、筋肉の活動を助けてくれるほか、ビタミンAとビタミンB1が疲労回復に効果的です。
栄養面でも優れている上、コンビニなどで手軽に調達できるおにぎりは、まさにキングオブ行動食と言えるでしょう。
パン
あんぱんやクリームパンなど、こちらもおにぎりと並んで糖質を多く含む定番の行動食。
菓子パンから調理パンまで、パンのバリエーションはおにぎり以上ですよね。
甘いもの、しょっぱいもの、辛いものなど、味の変化が楽しめる上、調理不要でそのまま食べられることもおにぎり同様大きなメリット。
おにぎりと比較して良い点は、何と言ってもその軽さです。
おにぎり1個が100g以上なのに対し、パン1個は100g以下がほとんど。
さらに、パン生地にはバターや牛乳が練り込まれているため、ごはんよりもエネルギーが高いんですよね。
菓子パンの代表と言えばあんぱんですが、あんにはタンパク質、ビタミン、ミネラル、食物繊維が含まれていて、小豆の栄養がしっかりとれるのも良い点。
ちなみに、エネルギーが高いのはこしあんよりつぶあん。
ですが、こしあんのほうがタンパク質やミネラルが多めになります。
調理パンは日持ちの点でやや難がありますが、主食と副菜を一度にとれるサンドイッチは、栄養面やエネルギー面で優秀。
ただ、バックパックの中でつぶれてしまうと残念なことになってしまうので、持ち運びに注意が必要ですね。
チョコレート
疲れたときに食べると即効性があるのがチョコレート。
普段はダイエットの敵として我慢してしまうほど高カロリーなのが気になりますが、山登りでは即効性のある高エネルギー食として大活躍する食べ物です。
チョコレートには、エネルギーとなる栄養素の糖質と脂質が両方含まれていて、すみやかにエネルギーに変わるのがメリット。
ナッツ入りのチョコレートは、脂質を多く含むナッツがゆっくりとエネルギーに変わるので、即効性のあるチョコレートと好相性。
その後のスタミナも持続します。
ただ、チョコレートは気温の高い時期にはどうしても溶けやすいので、持ち運びに注意しましょう。
飴・キャラメル
飴やキャラメルは、おそらくもっとも手軽にエネルギー補給ができる行動食かもしれません。
山登りでなくても、普段から持ち歩いている人もいるのでは?
スポーツ用のキャンディとして、塩分の補給ができる塩キャンディやビタミンC・クエン酸が補給できるキャンディがあります。
砂糖の塊と言ってもいいほど糖分が高いキャラメルも、登山の行動食として適しています。
山小屋泊やテント泊など、環境の変化で起こる便秘や下痢対策には、腸内環境を整えてくれるハチミツキャンディがおすすめ。
クッキー・ビスケット
小麦粉が主成分のクッキーやビスケットも行動食の定番。
口の中が多少パサつくのがデメリットですが、栄養素は糖質と脂質がほとんどで、とにかくエネルギー量が期待できます。
のどが渇きにくいソフトタイプのものがおすすめです。
ひとつひとつ小包装されているものはゴミになってしまうので、袋から出して持っていくようにするといいですね。
ドライフルーツ
生の果物の栄養素が凝縮されているドライフルーツ。
いろいろな種類の果物を組み合わせることで、さまざまな栄養素を効率よく取り入れることができます。
ドライフルーツには、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅などのミネラルが含まれているので、電解質補給にも。
ビタミンや食物繊維、抗酸化作用をもつ成分が多く含まれていることもうれしいですよね。
ドライフルーツのメリットは、生の果物よりも軽くて保存性が高く、手軽に食べられること。
含まれる糖類は果糖やブドウ糖なので、砂糖やショ糖よりも吸収が早く、即効性のあるエネルギー補給ができます。
ドライフルーツは、まさに登山の行動食としてぴったりの食べ物なんです。
ビタミンA・C・βカロテンが豊富に含まれているマンゴーは、メラニンの生成を抑え、傷んだ細胞を修復してくれる働きがあるので、紫外線対策としてもおすすめです。
ナッツ
脂質を多く含むナッツは、高エネルギー食の代表。
良質なタンパク質が含まれているので、少量でもとても高い栄養効果が期待できます。
ちなみに、高エネルギー順に並べると、マカダミアナッツ→くるみ→アーモンド→カシューナッツの順になります。
ナッツにはオレイン酸やリノール酸などの不飽和脂肪酸が豊富に含まれているので、健康効果もバッチリ。
ナッツの脂質はゆっくりとエネルギーに変わるので、すぐにエネルギーとして使われるチョコレートと合わせて摂取するのがおすすめです。
チーズ
熟成発酵食品であるチーズは、少量でもエネルギー量が高く、脂質やカルシウムなどの栄養成分が豊富。
消化を助ける働きのある乳酸菌や、肝臓の働きを助けてくれるアミノ酸が含まれています。
チーズの保存方法は要冷蔵ですが、アルミ包装のものやスモークチーズなどは比較的保存がきき、ナチュラルチーズよりプロセスチーズのほうが日持ちします。
ゼリー飲料
さまざまな種類のものが売られているゼリー飲料も、登山の行動食の定番。
エナジージェルとも呼ばれています。
エネルギー補給を目的としたものなら、1パックで150~180キロカロリーと、おにぎり1個分のエネルギーが摂取できます。
また、栄養素を重視したゼリー飲料は、エネルギー量が低くても栄養面での補給に
手軽にエネルギー補給ができ、しかも即エネルギーに変わってくれるというメリットがあります。
ですが、ゼリー飲料は1パック150~180gと重さがあるのが難点。
とは言え、食欲が出ないときや体調が優れないときのエネルギー補給には最高の行動食ですよね。
エナジーバー
カロリーメイトやソイジョイなど、スティック状になっているバランス栄養食品は、エネルギーと栄養価が高いだけでなく、携行しやすく食べやすい形状なので、登山の行動食として優れた食べ物といえます。
グラノーラなどの雑穀やドライフルーツなどを固めたシリアルバーも、ビタミンやミネラル、食物繊維を手軽にとることができるのでおすすめ。
これらのエナジーバーは、おやつ感覚のものからスポーツ用のものまでさまざまな種類があるので、自分の好みに合ったものを探してみるといいですね。
せんべい
炭水化物である米が原料で、適度に塩分を含むせんべいは、登山の行動食としても最適。
とくに、揚げせんべいや砂糖をまぶしたざらめせんべい、ピーナッツが入った南部せんべいなどは思いのほか高エネルギーです。
また、ピーナッツ入りの柿の種、通称“柿ピー”も、行動食の定番。
高エネルギーで食べやすいのでおすすめです。
ジャーキー・サラミ
塩漬けした牛肉を乾燥させて燻製にしたビーフジャーキーや、肉を腸詰めにして乾燥熟成させたサラミは、高いエネルギー量が得られる食べ物。
どちらも常温で長期保存が可能な上、肉の旨味と栄養が凝縮されているので、登山中に肉が食べたくなったときなどに便利です。
伝統的な行動食
無添加で体に良く、保存性に優れている伝統的な食べものが、日本には数多くあります。
これらは塩分や糖分が多いので、登山の行動食として最適。
上手に活用していきたい食べ物です。
甘酒
「飲む点滴」とも言われる甘酒は、即エネルギーに変わるブドウ糖が豊富な発酵食品。
米こうじを原料とした甘酒には、ビタミンB群やアミノ酸が含まれていて、疲労回復効果が優れているのが特徴です。
冬の飲み物というイメージが強い甘酒ですが、昔は夏バテ予防として飲まれていたそうです。
今は、冷やし甘酒なんていうのもありますよね。
米こうじ以外に酒かすを原料とした甘酒もありますが、こちらにはアルコールが含まれているので山登りには不向き。
市販の甘酒には、砂糖を加えたものもあります。
甘納豆
豆を砂糖で煮詰め、その上にさらに砂糖をまぶして乾燥させた甘納豆は、保存性が高く、糖質やタンパク質、ビタミンなどの栄養素を手軽に補給できる食べ物です。
新田次郎著の小説『孤高の人』には、主人公の加藤文太郎が行動食として山に持っていったと書かれています。
小豆以外に、エンドウ豆やソラ豆、ウズラ豆や花豆などがあり、色とりどりの見た目や食感の違いも楽しめます。
干し芋
蒸したさつまいもを乾燥させた干し芋は、食物繊維をはじめ、カリウムや鉄分、マグネシウムを豊富に含む栄養価の高い食べ物。
炭水化物なので腹持ちが良く、干すことで栄養が凝縮されているので、登山の行動食に向いています。
乾燥させた食べ物の中では比較的水分も多く含んでいるので、山でも食べやすいのではないでしょうか。
かりんとう
小麦粉を油で揚げ、黒糖をからめたかりんとうは、糖質と脂質の塊といっても過言ではない、高エネルギー食。
黒糖にはミネラル分も多く含まれているので、発汗で失われるミネラルの補給にも役立ちます。
かりんとうは保存性が高く軽いので、登山の行動食としておすすめの食べ物です。
ようかん
小豆と砂糖を寒天で固めたようかんは、常温での長期保存が可能な保存性の高い食べ物です。
そのため、登山の行動食としてはもちろん、非常食としても優秀。
真空パックに小分けされているひと口サイズのようかんは、食べやすく携帯に便利。
ただ、ゴミがベタベタしてしまうのが難点です。
干し柿
“マタギ”が山に入るときに必ず持っていく行動食と言われているのが干し柿です。
干し柿には、即エネルギーに変わるブドウ糖や果糖が多く含まれていて、干し柿1個でごはん1杯分以上のエネルギー量があります。
もともと柿は、ビタミンAやC、カリウムやリンなどのミネラル分が豊富で、干し柿はそれらの栄養素がさらに凝縮されています。
高カロリーで保存がきくので、登山の行動食にはもってこいの食べ物ですね。
梅干し
出典:無印良品
ナトリウムとクエン酸たっぷりの梅干しも優れた行動食のひとつ。
発汗で失われたナトリウムを補給することができ、クエン酸が疲労回復に役立ってくれます。
行動食の王様であるおにぎりの具にすれば、滅菌効果でごはんの腐敗を防いでくれる上、梅干しに含まれる塩分が食欲を増進し、酸味が唾液の分泌を促してくれます。
種を抜いて乾燥させたタイプのものが携行しやすいのでおすすめ。
行動食の番外編
さいごは、「こんな食べ物も場合によってはありだなー」と思うような、行動食の番外編。
人によっては定番になっている場合も?
ゆで卵
必須アミノ酸をバランスよく含み、手軽にタンパク質を補給できるのが卵。
ビタミンやミネラルも含んでいる卵は、その栄養価の高さから“完全食品”とも言われていますよね。
卵を登山の行動食として持っていくときは、割れる心配がないゆで卵にして持っていくのがおすすめ。
ゆで卵にしても生卵の栄養価がほぼそのまま得られます。
卵にはタンパク質が多く含まれているので、消化がゆっくりで腹持ちも良く、長時間の山登りにぴったりです。
果物
りんごやバナナ、みかんなどの果物には果糖が含まれているので、即効性のエネルギー源となります。
豊富に含まれているカリウムが、汗で失われやすいミネラル補給に役立つほか、高い抗酸化作用とビタミンCで紫外線対策にも効果的です。
果物に含まれる水分と甘味・酸味が登山中にひときわ美味しく感じられますが、その反面、水分のせいで重くなってしまうのが難点。
皮がゴミになってしまうところも残念な点ですね。
ミニトマト
ひと口サイズでサッと食べることができ、程よい甘味と酸味が疲れた体に心地よいミニトマト。
ミニトマトは、普通のトマトよりエネルギー量も栄養価も高め(同量で比較した場合)で、実は行動食にもってこいの食べ物なんです。
あらかじめヘタを取っておき、つぶれないようにタッパーなどに入れて持ち運ぶといいですね。
魚肉ソーセージ
スケソウダラなどの白身魚をすり身にして加工した魚肉ソーセージ。
タンパク質が豊富で消化が良く、常温で長期保存できるのがメリットです。
魚肉ソーセージの中には、カルシウムやDHAが添加されている機能性魚肉ソーセージもあるので、栄養面でもメリットが大きいです。
やや重さが気になりますが、持ち運びしやすいので行動食に取り入れたい食べ物ですね。
コンデンスミルク
別名、練乳とも言われているコンデンスミルクは、牛乳に砂糖を加えて濃縮したもの。
甘くて粘り気があり、チューブタイプのものはそのまま飲むこともできます。
糖質・脂質が含まれているのでエネルギー量が高く、カルシウムは生乳の2倍。
意外ですが、ビタミンも豊富なんですよ。
ちょっと勇気がいりますが、極度に疲労したときなど、チューブからそのまま摂取すると即効性がありそうです。
まとめ
普段は好んで食べないものでも、山で食べるとなぜか美味しく感じるから不思議!
そのときに「食べたい!」と思う食べ物が、体にとって必要な栄養なのかもしれません。
味の好みや消化の良・不良など、合う行動食は人それぞれなので、いろいろ試してみるといいですね!
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