
YAMAPやヤマレコなど、ほかの登山者の方の活動日記を見ていると、「やぶこぎが必要でした」というような文言を目にすることがあります。
この“やぶこぎ”という登山用語、字面から何となくその意味を推測することができますが、勉強がてら改めてここでまとめておこうと思います。
登山道を歩いているだけなら、あまり意識することのない“やぶこぎ”。
でも、登山道が不明瞭な山や、季節によって草木が大きく成長する山では、活動日記の中で頻繁に登場することがあります。
「やぶこぎ」と書いてあったら、単に「草が多い道」という意味ではなく、通常の登山道歩きとは違う労力が必要な区間だと考えておいたほうがよさそうです。
“やぶこぎ”とは?

“やぶこぎ”は、「やぶをこぐ」という言葉からできた登山用語です。
笹や雑草、低い灌木などが生い茂っているような道なき道、いわゆるやぶの中を、手や体全体を使いながらかき分けて進むことをいいます。
その様子がまるでやぶの海を漕いでいるように見えることから、“やぶこぎ”と呼ばれるようになりました。
登山道がしっかり整備されている山では、なかなか経験することがありませんが、登山者が少ない山や、あまり整備されていないルートでは、突然やぶが現れることもあります。
特に、春から夏にかけて植物が一気に成長すると、以前は見えていた踏み跡が草木に覆われてしまうことがあります。
秋になると草が枯れて歩きやすくなる場合もありますが、逆に落ち葉が登山道を覆ってしまい、道そのものが分かりづらくなることも。
同じ山、同じルートでも、季節によってやぶの状態が大きく変わるということですね。
やぶの中を進むときは、足元が見えにくくなるのも大きな特徴です。
普通の登山道なら見えている木の根や石、段差などが草の下に隠れてしまうので、思った以上に歩きにくくなります。
「ちょっと草が多いだけでしょ」と思っていたら、足元が全く見えず、予想以上に時間がかかってしまった……なんてこともありそうです。
また、やぶの中では進行方向を見失いやすくなります。
背の高い笹などに囲まれると、周囲の景色が見えなくなり、現在地や進む方向を確認しづらくなることも。
そのため、やぶこぎが想定されるルートでは、通常の登山以上に地図やGPSなどを活用しながら進むことが大切です。
“やぶこぎ”が必要になるのはどんな場合?
通常、整備された登山道や多少なりとも踏み跡のある登山道を歩く場合はやぶこぎをする必要はありません。
では、やぶこぎが必要になるのはどんな場合なのでしょうか?
①沢登りの終了点から稜線に上がるとき

わたしはまだ沢登りの経験がないのですが、沢登りが終わった後、稜線上に出るときにやぶこぎが必要になりますよね。
それを考えると、沢登りはつくづく上級者向けのアクティビティなんだなーと感じます。
沢登りでは、沢そのものを登ることが目的になるため、一般的な登山道とは違う場所を進むことになります。
そして、沢を登り切ったあとに稜線へ上がる区間では、明瞭な登山道がない場合もあります。
そのため、最後の最後に待っているのが“やぶこぎ”ということも。
水の中を歩いたり、岩場を越えたりしたあとに、今度は植物をかき分けながら進む……。
そう考えると、沢登りは体力だけではなく、地形を読む力やルートを判断する力など、さまざまな技術が必要になるアクティビティなんですね。
もちろん、沢登りのすべてのルートでやぶこぎが必要になるわけではありません。
ルートによっては明瞭な登山道につながっている場合もあります。
ただ、「沢を登ればそのまま簡単に登山道へ出られる」とは限らないので、事前にルートの情報を確認しておくことが重要です。
わたしはまだ沢登り未経験なので、いつか挑戦する機会があったら、やぶこぎまで含めてどんな世界なのか体験してみたいものです。
……とはいえ、最初から自力で挑戦するのはかなりハードルが高そうなので、経験者と一緒に行くのが安心ですね。
②登山ルートを見失ったとき

登山ルートを見失う・・・いわゆる道迷いに近い状態になりますが、こんな場合にもやぶこぎをしなければならないときがあるでしょう。
実際、わたしも何度かそういう状況でやぶこぎをするハメになったことがあるので、そう考えるとやぶこぎも案外身近なものなのかもしれませんね。
ただし、ここで注意したいのが、「登山道が分からないから、とりあえずやぶの中を進む」ことはおすすめできないということ。
やぶの中へ入ってしまうと、さらに道が分からなくなってしまう可能性があります。
最初は「ちょっと先まで行けば登山道があるはず」と思って進んでいても、気づいたら自分がどこにいるのか分からなくなってしまう……。
これでは道迷いがさらに深刻になってしまいます。
登山ルートを見失ったときは、まず落ち着いて、分かっている場所まで戻れるかを確認することが大切です。
「道がないから前へ進む」のではなく、「最後に道を確認できた場所まで戻る」という判断も必要なんですね。
特に、踏み跡が薄い場所ややぶが濃い場所では、無理に突破しようとせず、地図やGPSを確認しながら現在地を把握するようにしたいものです。
やぶこぎが必要なルートなのか、それとも単純に道を間違えてやぶの中に入ってしまったのか。
ここを判断することも大切ですね。
やぶこぎで気をつけたいこと
やぶこぎは、単に「草木をかき分けて進む」だけに見えますが、実際にやってみると普通の登山道よりも体力を使います。
まず、足元が見えにくいので、木の根や岩、段差などに注意が必要です。
見えていない場所に足を置くことになるので、いつも以上に慎重に歩きたいところ。
また、枝や笹が顔や腕に当たることもあります。
長袖・長ズボンなど、肌の露出を少なくする服装のほうが安心です。
季節によっては虫が多くなることもあるので、虫よけ対策もしておきたいですね。
そして、やぶの中を進んでいると、思った以上に時間がかかります。
登山地図に記載されているコースタイムが、整備された登山道を歩くことを前提としている場合、やぶこぎによって実際の歩行時間が大幅に伸びる可能性もあります。
「この区間はやぶこぎあり」と事前に分かっているなら、通常の登山よりも余裕を持った時間計画を立てておくことが大切です。
特に日帰り登山の場合は、やぶこぎで時間を使いすぎると、下山時刻が遅くなってしまう可能性があります。
ヘッドライトなどを準備しておくのはもちろんですが、できれば暗くなる前に下山できるよう、早め早めの行動を心がけたいですね。
やぶこぎがある山は事前の情報収集が大切
やぶこぎが必要なルートに行く場合は、事前に情報を集めておくことも重要です。
YAMAPやヤマレコなどの活動日記を見ると、実際にそのルートを歩いた人のリアルな情報を確認できることがあります。
「腰くらいまでの笹がありました」
「登山道がほとんど見えませんでした」
「この時期はやぶが濃かったです」
など、地図だけでは分からない情報が見つかることも。
同じルートでも季節によって状況が変わるので、できるだけ最近歩いた人の活動日記を参考にするとよさそうです。
また、活動日記だけではなく、登山地図や山岳ガイド、地元の登山情報なども合わせて確認しておくと安心です。
「やぶこぎあり」と書かれている場合は、どのくらいの距離なのか、どの程度の深さなのか、道が分かりやすいのか、といったところまで確認できると、実際の山行をイメージしやすくなります。
やぶこぎも登山の楽しみのひとつ?
やぶこぎと聞くと、「大変そう」「できれば避けたい」と思ってしまいますが、普段の登山道では味わえない独特の楽しさがあるのも事実。
草木をかき分けながら進んでいくと、まるで探検をしているような気分になります。
誰も歩いていないような場所を進んでいく感覚は、整備された登山道とはまた違ったワクワク感がありますよね。
もちろん、安全に進めることが大前提。
やぶこぎそのものを目的にするのではなく、ルート上に必要な区間がある場合に、その山ならではの体験として楽しむくらいがちょうどよさそうです。
そして、やぶを抜けた先で稜線や山頂が見えたときの達成感は、きっと格別。
「ここまで来たか!」という気持ちになりそうです。
以上、登山用語“やぶこぎ”についてのお話でした。
“やぶこぎ”という言葉を活動日記で見かけたら、「ちょっと草が多い道なのかな?」くらいに考えてしまいそうですが、実際には歩行速度が落ちたり、足元が見えづらくなったり、道迷いのリスクが高まったりすることもあります。
特に、初めて歩くルートで「やぶこぎあり」と書かれていたら、普段の登山道とは少し違う準備が必要だと思っておいたほうがよさそうですね。
でも、そういうちょっとワイルドな山歩きも含めて、山にはいろいろな楽しみ方があります。
いつか本格的なやぶこぎを体験する日が来るのか……。
まずは活動日記を見ながら、どんなやぶなのか想像してみたいと思います!

コメントはこちら