
「今日はちょっとあの山にのぼってみようかな?」などと、その日の気分や天候で山登りを即決してしまう人も中にはいるでしょうが、ほとんどの場合、あらかじめ計画を立ててから山へ向かうと思います。
その山登りの計画のことを“山行計画”と呼びますが、具体的にはどんなことを計画していくのでしょう?
山行計画が入念であればあるほど安全で快適な登山になると言われているので、出発前に山行全体の概要をしっかり把握しておきたいものですよね。
特に近年は、登山アプリやオンラインの登山計画サービスが充実し、以前よりも山行計画を立てやすくなりました。
一方で、スマートフォンでルートを作成しただけで「計画を立てた」と思ってしまうのはちょっと危険。
自分の体力・技術、天候、登山道の状況、交通手段、下山時刻、トラブルが起きた場合の対応まで考えて、初めて「山行計画」が完成すると考えておきたいところです。
今回は、登山の肝となる山行計画とは一体どういうものなのか、そして、具体的な山行計画の立て方を5つのステップに沿って見ていきたいと思います!
山行計画とは?
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山行計画とは、登山をする前に、
- いつ
- どこの山へ
- 誰と
- どんなルートで
- どんな装備で
- どのくらいの時間をかけて
- どのように登るのか
などを一緒に山に登るメンバーと共有し、具体的にシミュレーションすることをいいます。
単に「○○山に登る」と決めるだけではなく、登山口から山頂まで、そして山頂から下山口まで、実際に自分たちがどう動くのかを事前に考えておくことが山行計画の大きな目的です。
ここで混同しがちなのが、山行計画と登山届。
山行計画を立てることと登山届を作成することは違うということなんです。
山行計画は、自分たちが「どう行動するかを明確にするため」のもの。
一方、登山届・登山計画書は、その計画を警察や自治体などに届け出たり、家族・友人などに共有したりして、万が一の際に捜索・救助の手がかりにするためのものです。
つまり、
山行計画を立てる
↓
必要な情報を整理する
↓
登山計画書・登山届として提出する
↓
家族や友人にも共有する
という流れで考えると分かりやすいでしょう。
なお、登山届の提出ルールは全国一律ではありません。
山域によっては提出が推奨される場合もあれば、条例などによって提出が義務付けられている場合もあります。
たとえば長野県では、県内の指定登山道を通行する際、長野県登山安全条例に基づいて登山計画書の届出が必要です。長野県警も、登山計画書を作成して家族や職場などに託すよう案内しています。
事前の綿密な山行計画が山登りの成否を左右すると言っても過言ではないので、地図を見ながらじっくりシミュレーションするのが大事とのこと。
しかも、計画を立てる段階で「このコースは自分たちには少し厳しいかも」「下山時刻が遅くなりそう」「この時期は雪が残っているかもしれない」などと気付ければ、実際に山へ入る前に計画を変更できます。
これこそが山行計画の大きなメリットです。
では、つぎに山行計画の具体的な立て方について見ていきますね。
山行計画の立て方、具体的な5ステップ

山登りの計画を立てるときは、5段階のステップを踏んで行うと上手くいくんだそう。
以下に、具体的な5ステップをまとめてみます。
ステップ1レベル検証
まずは登る山を決めなければ始まらないので、行きたい山を選び、その山が自分のレベルに合っているかどうかを検証します。
ここで重要なのは、「山の名前」だけで難易度を判断しないこと。
同じ山でも、登山口やルートによって難易度は大きく変わります。
標高が低い山でも急登や岩場が続くコースがあれば、標高の高い山でも比較的歩きやすいコースがあります。
そのため、
・標高
・標高差
・歩行距離
・累積標高
・コースタイム
・登山道の状態
・鎖場や岩場などの危険箇所
・山小屋や避難小屋の有無
・季節による難易度の変化
などをまとめて確認します。
さらに、自分自身の体力・技術・経験と照らし合わせることも重要です。
「去年はこの山に登れたから大丈夫」と考えるのではなく、最近どのくらい山を歩いているのか、同行者の中に初心者はいないか、体調に問題はないかなども考えて山を選びましょう。
長野県も、登山者に対して自分の経験・体力に見合った計画を立てるよう呼びかけており、「信州 山のグレーディング」など、力量に合った山を選ぶための情報を提供しています。
こちらのサイトでは、山の難易度がレベルとして数値化されているので、山選びの参考になります。

ただし、登山サイトの難易度はあくまで山選びの参考情報。
「難易度○だから大丈夫」と数字だけで判断せず、最新の登山道状況や天候、季節条件なども合わせて確認しましょう。
特に積雪期や残雪期、真夏、高山では、同じルートでも季節によって難易度が大きく変わります。
ステップ2地図確認
山を選んだら実際に登山地図を広げて、ルートをたどりながらコースタイムや危険箇所などの注意事項を拾っていきます。
現在は紙の登山地図だけでなく、スマートフォンの地図アプリでもルートを確認できます。
とはいえ、スマートフォンだけに頼るのではなく、紙の地図や予備の電源なども含めて考えるのがおすすめです。
登山地図で確認しておきたいポイントは以下の6つ。
- 危険箇所
通過するのに注意が必要なハシゴやクサリ、岩場、ガレ場、急斜面、細いトラバースなどを確認します。
メンバーに苦手な人がいる場合、コースを変更したり、登る山を選び直したりする必要もあります。また、危険箇所が「登り」なのか「下り」なのかも確認しておきましょう。
同じ岩場でも、登りでは問題なくても疲労した下山時には難しく感じることがあります。 - 標高差・累積標高
等高線の幅が狭いところは、標高差に対して距離が短い=急傾斜なので、ペース配分に注意。
標高やコースタイムとともに、どんな地形になっているのか想像しながら計画を立てていきましょう。特に日帰り登山では、山頂までの標高差だけでなく、途中のアップダウンを含めた累積標高にも注目したいところです。 - コースタイム
『山と高原地図』などの登山地図に記されているのは、あくまで標準コースタイム。
これを目安にして、自分たちの体力やメンバー構成に合わせて調整します。初心者が多い場合、休憩を多めに取る場合、荷物が重い場合などは、標準タイムより時間がかかる可能性があります。それから、意外に忘れがちなのが休憩時間。
1時間に1回10分など、一定の休憩を目安にして、コースタイムとは別に余裕を持って組み込みます。
ランチ休憩も「食事をする時間」だけではなく、景色を楽しむ時間やトイレの時間なども考えておきましょう。「標準コースタイムぴったり」で計画するのではなく、予定より遅れた場合でも明るいうちに下山できる余裕を持たせることが重要です。 - 歩行距離
「分岐のあと、〇m進んで岩場がある」など、注意が必要な場所までの距離を把握しておきます。歩行距離だけでなく、登りと下りの割合、急登の長さ、休憩ポイントなども確認します。 - 山小屋・避難場所
山小屋は宿泊だけでなく、昼食やトイレなどでも利用できます。
万が一の避難場所になる場合もあるので、コース上にどんな施設がどれくらいの間隔であるのかを確認しておきましょう。ただし、山小屋は必ず営業しているとは限りません。
季節営業だったり、休業日が設定されていたりすることもあるので、利用する場合は公式サイトなどで営業状況を事前に確認します。 - 水場
持参した水が尽きた場合に飲み水を補給できる場所をチェック。
湧き水や雪解け水などを利用しているところがあったり、時期によっては枯れている場合もあります。「地図に水場と書いてあるから大丈夫」と考えず、その時期に実際に水が出ているのか、飲用できるのかを確認しておくと安心です。
そして、地図を見るときにもう一つ確認しておきたいのが「エスケープルート」です。
「予定どおり山頂まで行く」ルートだけでなく、
「途中で体調が悪くなったらどこから下山するか」
「天候が悪化したらどこへ逃げるか」
「予定より大幅に遅れたらどこで引き返すか」
まで地図上で確認しておきます。
山行計画では、目的地に到達することだけを考えるのではなく、「途中でやめる場合のルート」まで含めて計画しておくことが大切なんですね。
ステップ3天候チェック
登山地図を確認したら、山域の天気や気温をネットを利用して確認します。
ただし、天気予報は「出発前に一度見る」だけでは不十分。 数日前から予報の傾向を確認し、前日・当日にも最新情報をチェックするようにしましょう。
山では、平地とは天候が大きく異なることがあります。
標高が上がるほど気温が下がり、風が強くなれば体感温度も大きく変わります。
また、晴れ予報でも午後から雷雨になるなど、時間帯によって状況が変化することもあります。
天気予報を見るときは、
・降水確率
・気温
・風速・風向
・雷
・雨や雪の時間帯
・視界
・日の出・日の入り
などを確認します。
特に高山では、「雨が降るかどうか」だけでなく、風の強さや雷の可能性にも注目したいところです。
当日の天気や気温に合わせ、どんな服装でどんな装備を用意すればいいのかが見えてきます。
こちらのサイトは、山の天気を予測する専門サイトです。

現在の「ヤマテン 山の天気予報」では、全国330山の山頂予報をはじめ、警戒事項や大荒れ情報、専門天気図など、登山向けの気象情報が提供されています。
ただし、どれだけ精度の高い予報を確認しても、山の天気が予報どおりになるとは限りません。
そのため、
「雨だったらどうする?」
「強風だったら?」
「雷が発生したら?」
「予定より早く天候が悪化したら?」
というところまで考えておくことが大切です。
そして、登山を中止する判断も立派な山行計画の一部です。
「せっかく予定を立てたから」「ここまで来たから」と無理に登るのではなく、天候や体調が悪い場合は山へ行かない、途中で引き返すという選択肢を最初から持っておきましょう。
ステップ4画像検索・最新情報の確認
山行のイメージを深めるために、コース上にあるさまざまなポイントの画像をネットで検索します。
とくに危険箇所はじっくりチェックしておきたいもの。
「この岩場は実際にはどれくらい急なのか?」
「登山道の幅はどのくらいなのか?」
「登山口はどんな場所なのか?」
など、地図だけでは分からない情報を写真や登山記録から補います。
以下のサイトでは、実際に山を登った人の山行記録を見ることができます。
ただし、ここでも注意したいのが「過去の山行記録=現在の登山道状況ではない」ということ。
登山道は、
・大雨による崩落
・落石
・倒木
・橋の流失
・残雪
・雪解けによる路面状況の変化
・工事
・通行止め
・山小屋の営業状況変更
などによって短期間でも大きく変化します。
そのため、登山者の投稿は「現地のイメージを知るための参考情報」として活用し、通行止めや道路状況などの重要情報については自治体、警察、山小屋、登山道管理者などの公式情報を優先するようにしましょう。
実際、長野県は2026年8月にも登山道・アクセス道路の最新状況を更新しており、8月8日に発生した土石流による中房線の通行止めと、その後の暫定的な通行再開について案内しています。こうした情報は、登山計画そのものを変更する可能性があります。
つまり、山行計画は「一度作ったら終わり」ではありません。
出発直前まで最新情報を確認して、必要なら計画を修正することが重要です。
ステップ5イレギュラー対応・撤退基準
山行計画の最後は、起こりうるトラブルを想定して、どのように対処するかをあらかじめ考えておくこと。
万が一のエスケープルートを確認したり、ケガに備えてエマージェンシーキットを準備したりなど、イレギュラーなことが発生したときにどのようにしてリカバリーできるか考えておきましょう。
そして、ぜひ決めておきたいのが「撤退基準」です。
登山中に判断するのではなく、出発前に、
・○時を過ぎたら山頂を目指さず引き返す
・雷が近づいたら稜線から離れる
・メンバーの体調に異変が出たら全員で下山する
・予定より大幅に遅れたらエスケープルートへ変更する
など、「こうなったらやめる」という基準を決めておきます。
これが意外と重要です。
登山中は、「あと少しだから」「ここまで来たのだから」と予定を変更しにくくなってしまうことがあります。
だからこそ、冷静な状態で「撤退する条件」をあらかじめ決めておくのです。
また、万が一に備えて、
・携帯電話
・モバイルバッテリー
・ヘッドランプ
・雨具
・防寒着
・ファーストエイドキット
・行動食
・十分な飲料
・地図・コンパス
・必要に応じてGPS機器や衛星通信機器
なども準備します。
警察庁も、山岳遭難防止のため、無理のない登山計画の作成、登山計画書の提出、携帯電話などの通信機器やGPS端末等の携行、家族・知人への連絡などを安全登山のポイントとして挙げています。
さらに、「誰か一人が遅れたらどうするか」も事前に決めておきましょう。
グループ登山では、速い人が先に進み、遅い人が一人で取り残されてしまうことがあります。
出発前に、
「先頭と最後尾を決める」
「分岐では全員がそろうまで待つ」
「単独行動をしない」
など、グループ内のルールを共有しておくと安心です。
山行計画は「登る」だけでなく「帰る」まで考える

山行計画というと、「山頂に何時に着くか」ということばかり考えてしまいがちですが、実はもっと重要なのが「安全に下山できるか」ということ。
たとえば、
「9時に登山開始 → 12時に山頂 → 15時に下山」
という計画を立てたとしても、途中で休憩が増えたり、道に迷ったり、写真を撮ったりして時間が押す可能性があります。
そこで、
「この時間を過ぎたら山頂をあきらめる」
というタイムリミットを設定しておくと安心です。
特に日没後の行動は大きなリスクにつながります。
ヘッドランプを持っていたとしても、暗くなってから慣れない登山道を歩くのは避けたいもの。
「山頂に行くこと」よりも「安全に下山すること」を優先する。
これを山行計画の基本にしておきましょう。
山行計画を家族や友人にも共有しよう
山行計画は、一緒に登るメンバーだけが知っていればいいものではありません。
登山に参加しない家族や友人にも、行き先や予定を伝えておくことが大切です。
最低限、
・どの山へ行くのか
・どの登山口から入るのか
・どのルートを歩くのか
・誰と行くのか
・何時ごろ下山予定なのか
・宿泊する場合はどこに泊まるのか
などを伝えておきましょう。
長野県も、登山計画書を提出するだけでなく、家族や知人にも詳細な予定を伝えるよう呼びかけています。情報を共有しておくことで、万が一遭難した際に入山場所や遭難地点の特定を早め、捜索活動の迅速化につながるためです。
オンラインの登山計画サービスを利用すれば、計画そのものを家族や友人と共有できるものもあります。
紙に書いた計画を渡すだけでなく、スマートフォンから現在の計画を確認できるようにしておくと、予定変更があった場合にも対応しやすくなります。
登山計画書・登山届として提出する

山行計画を作成したら、最後に忘れてはいけないのが登山計画書・登山届の提出です。
山域によって提出方法は異なりますが、
・登山口の登山届ポスト
・警察や自治体への提出
・自治体の電子申請
・オンライン登山届サービス
などの方法があります。
現在はスマートフォンから登山計画を作成し、そのまま提出できるサービスも増えています。
長野県では、2024年度の指定山岳への登山計画書について、届出件数の76.1%がインターネット経由となっており、オンラインによる届出が大きな割合を占めています。さらに、民間サービスを利用した「みなし届」の届出も増えています。
長野県では、2026年現在、Compass(コンパス)やYAMAPを通じた登山計画書の届出にも対応しています。
オンライン化によって、登山前に自宅で計画を作成し、家族や友人と共有しながら提出まで済ませられるようになったのは、登山者にとってかなり便利ですよね。
ただし、オンラインサービスを利用する場合も、そのサービスが登る山域の登山届提出先として認められているかを確認することが大切です。
山行計画は出発直前にもう一度チェック
山行計画を数日前に作ったら、それで終了……ではありません。
登山前日、できれば出発直前にも、もう一度チェックしておきましょう。
最終確認したいのは、
・天気予報
・雨や雷の可能性
・気温・風
・登山道の通行状況
・道路や公共交通機関の状況
・山小屋の営業状況
・水場の状況
・残雪や雪渓の状況
・工事・通行止め
・火山活動などの注意情報
・メンバーの体調
など。
長野県も、山小屋、地元自治体、観光協会などを通じて、登山口までの道路や登山道、残雪などの現地の最新情報を事前に確認することを呼びかけています。
もし、この段階で「ちょっと天気が怪しい」「登山道が通行止めになっている」「メンバーの体調がよくない」などの問題が見つかったら、計画を変更します。
場合によっては「今回は登山を中止する」という判断も必要です。
計画どおりに山へ行くことが目的なのではなく、安全に山を楽しむことが目的なのですから、計画変更や中止は決して失敗ではありません。
山行計画は「余裕」を入れて完成
以上、山行計画の具体的な立て方についてでした。
今回紹介した5ステップをまとめると、
ステップ1:自分のレベルに合った山・コースを選ぶ
↓
ステップ2:地図を見てルート・危険箇所・コースタイムを確認する
↓
ステップ3:天候・気温・風などを確認する
↓
ステップ4:写真や最新の登山道情報を確認する
↓
ステップ5:エスケープルート・撤退基準・トラブル対応を決める
という流れになります。
そして、ここにもう一つ加えたいのが「余裕」です。
時間に余裕を持たせる。
体力に余裕を持たせる。
水や食料に余裕を持たせる。
装備に余裕を持たせる。
そして、予定を変更できる心の余裕を持つ。
登山では、ちょっとした遅れや体調不良、天候の変化が、その後の行程に大きく影響することがあります。
だからこそ、山行計画では「予定どおりにいった場合」だけでなく、「予定どおりにいかなかった場合」も考えておくことが大切なんですね。
山行計画を立てるということは、山を縛ることではありません。
むしろ、しっかりと計画しておくことで、現地では安心して景色を楽しんだり、写真を撮ったり、同行者との会話を楽しんだりできます。
そして、計画を立てる段階で「自分たちにはちょっと難しいかも」と分かったら、もっと簡単なルートに変更する。
「天気が悪そう」と分かったら、別の日に変更する。
「下山が遅くなりそう」と分かったら、途中で引き返す。
「山頂に立つこと」よりも「全員が無事に帰ってくること」を優先する。
これが、安全な山行計画を立てるうえで一番大切なことなのかもしれません。
さて、わたしもこの5ステップに沿って、つぎの山行計画を立ててみようと思います!
その際には、地図と天気予報だけでなく、登山道の最新情報や同行者の体力、撤退する場合のルートまでしっかり確認して、余裕を持った計画にしたいと思います。

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