高村光太郎著『智恵子抄』の『あどけない話』に登場する、“ほんとの空”を見に、2回目の安達太良山に登ってきました。
今回の登山は、トレッキングシューズを購入したばかりの妹と一緒です。
思えば、1回目の安達太良山登山は、本格的な初登山にして、初めての日本百名山登頂!
わたしが山登りを趣味として続けていこうと思ったキッカケとなった、思い入れのある山です。
初めての安達太良山登山のときは、当然ロープウェイを利用してのコース選択でしたが、今回はロープウェイを使わずに、奥岳登山口→馬車道→牛の背→安達太良山山頂→五葉松平→奥岳登山口の周回コースを歩いてきました。
限界まで体力を搾り取られ、最後は気力だけで下山することになった、2回目の安達太良山登山。
わたしの登山歴史上、最も疲弊し、重度の筋肉痛に見舞われた山行の様子をお伝えします・・・
安達太良山とは
標高1700mの“安達太良山”は、福島県を代表する山で、ロープウェイを利用すれば初心者でも簡単に登れる日本百名山のひとつです。
独立峰である安達太良山の山頂からは、360度の絶景を楽しむことができ、とくに紅葉時期の景色が素晴らしいとして、登山者だけでなく観光客にも人気!
登山自体は、ロープウェイを使って一気に標高を稼ぐことができるので、登山初心者でも気軽に楽しめます。
安達太良山の北側、標高1346m地点には、通年営業のくろがね小屋があり、酸性泉の天然温泉を楽しめることでも有名です。
ロープウェイ山頂駅から5分の位置にある薬師岳パノラマパークには、高村光太郎著『智恵子抄』の一節、“ほんとの空”の記念碑があり、安達太良山の眺めも良い、絶景スポットになっています。
標高 | 1700m |
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日程 | 日帰り |
登山適期 | 5月下旬~10月 |
グレーディング | 体力度:★★☆☆☆/技術的難易度:★★☆☆☆ |
チェックポイント | 勢至平/くろがね小屋/峰ノ辻/矢筈森/牛の背/沼ノ平火口/安達太良山山頂/仙女平分岐/薬師岳山頂/薬師岳パノラマパーク/“ほんとの空”記念碑/五葉松平 |
安達太良山の登山コース(周回コース)
安達太良山登山で最もメジャーなコースは、ロープウェイを利用して山頂へと向かうコース。
ですが、今回は2回目の安達太良山ということで、ロープウェイなしの周回コースを歩くことにしました。
安達太良山の登山コース
周回コース | 距離:約10km | コースタイム:5時間(日帰り) | 標高差:約760m |
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奥岳登山口
こちらは、あだたら山ロープウェイ山麓駅がある、あだたら高原レストハウス。
今日の天気は快晴、まさに登山日和です。
紅葉時期ということもあって、登山者の姿よりも観光客の姿のほうが目立ちます。
紅葉の見頃はわずかに1週間ばかり過ぎてしまいましたが、赤や黄色に染まる山肌が遠目からでも美しく、まだまだ十分堪能できそう!
紅葉時期の日曜日ということで、あだたら山ロープウェイ山麓駅の混みようは凄まじく・・・
乗り場はこのように長蛇の列!
ロープウェイ乗車を待つ列は、先ほどの写真にある、“安達太良山奥岳登山口”付近まで伸びていました。
待ち時間は、最後尾で15分待ちとのこと。
行きに迷って時間が押しているので、トイレをササッと済ませたらすぐ出発です。
奥岳登山口には、“奥岳の湯”という日帰り温泉施設があります。
登山後に、こちらで汗を流し、疲れをとって帰路につく登山者が多いそう。
そうそう、安達太良山の駐車場は、第一駐車場と第二駐車場があって、10月の土日祝日は第一駐車場のみ有料(普通車1000円)になります。
第二駐車場は、あだたら高原レストハウスから歩いて700mの位置にありますが、紅葉時期でも無料で利用できるので、わたしたちは第二駐車場に車を停めて歩いてきました。
登山者カードを提出して・・・
安達太良山登山、スタート!
前回、2年前に登ったときは、ロープウェイを利用して時計回りに進むメジャーな周回コースでしたが、今回はロープウェイを利用せずに反時計回りに進むマイナーな周回コース。
同じ方向に歩みを進める登山者もいることにはいますが、やっぱり少ない印象です。
初めて安達太良山に登ったとき、くろがね小屋を横目に見ながら立ち寄らずに下山したのが心残りでした。
なので、「今回は絶対くろがね小屋の中に入る!」という意気込みもあり、くろがね小屋経由のコースをたどることに。
奥岳登山口から、くろがね小屋経由で安達太良山山頂までは、距離にして約6km。
標高を一気に稼げるロープウェイを利用しないとなると、片道でも結構な距離です。
今日の行動食はこれ。
いろいろ取り揃えてきました。
一回の山登りで、どれくらいの量の行動食が必要なのかまだ手探り状態なので、これが多いのか少ないのか分かりません。
でも、好きなものばかりを入れてきたので、モチベーションが上がることは確かです。
少し歩くと、ベンチが設置されている広場に出ました。
あだたら渓谷自然遊歩道コースとの合流地点のようです。
下方には川が流れていて、鳥川橋という橋が架かっています。
しばらく行くと、旧道と馬車道の分岐。
見上げれば、赤、黄、緑の樹々たち。
とっても気持ちの良い秋晴れです。
勢至平分岐
紅葉真っ只中の樹々の中を歩いていくと、平地に近い緩やかな傾斜の登山道に。
勢至平です。
大小さまざまな石から成る登山道です。
勢至平分岐は、くろがね小屋を経由して峰ノ辻まで行く登山コースと、くろがね小屋を経由しないで峰ノ辻まで行く登山コースの分岐になります。
勢至平分岐には、登山道の左右にベンチが設置されているので、休憩場所としても最適。
バックパックを降ろして、水分補給と大好物いっぱいの行動食を口にしました。
妹が何やらじっと見つめているのは、こちら、穴ぼこだらけの大きな岩。
不思議な現象ですね。
この辺りから、進行方向に向かって右側の景観が良くなり、美しく紅葉した山肌を眺めることができます。
まもなく、左側に見えてくるのが水場。
こちらの水を水筒に補充している人が2~3人ほどいました。
透明度が高くて、ものすごく冷たい水です。
ふと、硫黄の臭いがしたのであたりを見ると、湯気を上げてパイプから流れ落ちる温泉のお湯が。
・・・ということは、温泉のあるくろがね小屋が近いということ!
一部下りになっている坂道を下っていくと・・・
憧れの山小屋、くろがね小屋(画面中央)が見えてきました!
くろがね小屋
くろがね小屋到着まで少し距離はありますが、くろがね小屋を目にしてテンションは大盛り上がり!
登山道の景色が素敵すぎてゆっくり歩きたいところですが、くろがね小屋を目指して、歩くスピードも次第に速くなります。
塩沢登山口から登ってくると、ここに出てくるのかな??
そして、2つめの水場を発見。
ここに来て驚きだったのが、登山道にジープが停まっていたこと!
そう言えば、地図に“ジープ道”という表記がありました。
登山道に車という違和感と物珍しさからか、ここで記念写真を撮っている登山者のご夫婦がいました。
このジープのすぐ近くに、素朴なたたずまいで建っているのが、くろがね小屋。
くろがね小屋は、東北では貴重な通年営業の山小屋です。
トレッキングシューズの汚れを落としてから、いざ山小屋の中へ。
くろがね小屋の中は撮影禁止ということだったので、もう一度外観だけ。
入口には、くろがね小屋の名前の由来にもなっている、黒い鐘が吊り下げられています。
もちろん、実際に鐘をつくこともでき、何人かの登山者が鐘をついていました。
このくろがね小屋を目の前に、昼食をとることにします。
来る途中、コンビニで買ったサンドイッチ!
バックパックの中で潰れてなくて良かったー!
それにしても、秋晴れの良いお天気です。
さて、くろがね小屋を後にし、峰ノ辻に向かいます。
鉄山の麓を歩く人たち・・・
雄大な自然を前にして、人間がいかにちっぽけな存在であるか、思い知らされるような光景です。
青空のグラデーションがとってもキレイ!
鮮やかな赤い実を見つけて、思わず接写。
秋を感じますよねー!
峰ノ辻
水分補給など、ちょっとした休憩の度に来た道を振り返りながら登っていくと、やがて峰ノ辻に到着です。
そこには、思わず歩みを止めずにはいられない絶景が広がっていました。
雄大でいてどこか物寂しく、荒涼とした地、沼ノ平火口・・・
ほとんど植物も生えていないその風景が、火山噴火の凄まじさを物語っています。
直径約1km、深さ約250mの火口は、インパクト大の絶景!
また、この景色に会えました!!
まるで、小さなピラミッドみたい!
何人もの登山者が入れ替わり立ち替わり、その頂上に立っているのが見えます。
青空と赤土のコントラストがキレイすぎる!
秋晴れの澄んだ空気がとってもさわやかです。
安達太良山の山頂部には溶岩の突起があり、遠くから見ると乳首に似ていることから、別名“乳首山”とも呼ばれているとか。
確かに、こうして見ると乳首に見えないこともない・・・?
足元の土は、赤土から黄土、そして、火山灰のような色をした土に変わっていきます。
安達太良山山頂までもうすぐです!
安達太良山山頂
安達太良山の山頂前には、このような山頂標識があり、おすすめの撮影スポットになっています。
山頂を踏むためには、急な突起部分をよじ登っていかなければなりません。
向かって右側にはクサリが設置されていて、左側にはハシゴが設置されています。
わたしたちは左側のハシゴへ。
長いハシゴと短いハシゴの2箇所を登っていきます。
そして、安達太良山山頂に着いた着いた着いた~!!!
妹と一緒に三角点タッチ!
山頂からの眺めはこんな感じ。
360°の絶景を楽しむことができます。
向こうの山々まではっきり見えて、気分爽快!
山頂に腰を下ろして、ひと休みすることにしました。
山のてっぺんでおにぎりを食べるのが楽しみで楽しみで・・・
それと、大好きな甘酒。
さわやかなゆず風味でほんのり甘く、登りの疲れが吹っ飛びます。
登りと同じくハシゴを使えば良かったのですが、うっかりルートを間違えて、クサリ場から飛び降りるはめに・・・
本当に危険だったので、決してマネしないでくださいね!
コーヒーを淹れたり、記念撮影をしたり、思い思いに過ごす人たち。
辺り一帯に漂うコーヒーの香りに癒やされます。
ロープウェイを使わずに五葉松平経由で下山する周回コースを選んだので、あとは薬師岳を目指して下るのみ。
(これが、“わたしの登山歴史上、最も疲弊し、重度の筋肉痛に見舞われた山行”になった原因となります・・・)
薬師岳
前日の雨の影響でぬかるみが見られ、滑りやすくなっていたので注意して下っていきます。
元々は階段だったのでしょうが、もはやハードルと化していますね・・・
岩も滑りやすくなっているので、滑って大ケガをしないように注意が必要です。
岩とも呼べるくらい大きな石を一歩一歩乗り越えていくと、やがて歩きやすい木道に入ります。
木道をしばらく行くと、薬師岳パノラマパークへ向かう道とロープウェイ乗り場へ向かう道の分岐に到着。
ロープウェイ利用の場合は、こちらの分岐を右に向かえば一気に下山できます。
わたしたちは、このまままっすぐ進み、薬師岳パノラマパークと呼ばれる展望台へ向かいます。
高村光太郎著『智恵子抄』に登場する一節、“ほんとの空”の記念碑があるので、ぜひ記念撮影を。
記念碑からさらに奥に進むと、薬師岳山頂です。
薬師岳の山頂にはこのような鐘があるので、記念に鳴らしてみては?
パノラマパークというだけあって、鐘の向こうはとても見晴らしが良く、絶景スポットになっています。
五葉松平
さて、薬師岳展望台からの絶景を楽しんだら、五葉松平に向かって再出発です。
こちらの登山道はショートカットできる近道ということで、それほど使われてはいないマイナーなコースなのでしょう。
整備が行き届いていないため、悪路が続きます・・・
このように、安達太良山山頂のクサリ場とほとんど同じくらいの落差になっている箇所もあります。
おそらく、階段が崩れ落ちてしまったんでしょうね。
いくつか難所を越え、現れたのはちっちゃなハシゴ。
こういう気遣いがとてもありがたく、心をなごませてくれます。
まだまだ滑りやすい道が続きますが、距離的にはあと少し!
最後の最後は、これまでの疲労が一気に足にくるゲレンデの下り。
「このまま山で一夜を過ごすわけにはいかない!」という、その気力だけでなんとか下山・・・
体力はゼロ、いえ、マイナス状態で、体はもうズタボロです。
無料の第二駐車場に停めたので、ズタボロの体で700mほど歩いて行かなければなりません。
いっぱいだった駐車場には、もう車が3~4台ほどしかなく、わたしの車の前にはなぜか鳩のお客さんが。
近づいても、車のエンジンをかけても全くどいてくれず、困ってしまいました。
そんなこんなで、2回目の安達太良山登山は無事終わりました。
結論:ロープウェイなしで安達太良山に登る場合、馬車道コースのピストンにすべき!
景色も馬車道コースのほうが格段に素晴らしいです。
五葉松平経由のコース・・・あれは登山道として機能していない箇所がありすぎて、下手すると大ケガにつながります。
限界まで体力を搾り取られ、最後は気力だけで下山することになるでしょう。
登山者で大混雑だったにも関わらず、わたしたちのほかには誰もいなかったことに納得のコースでした・・・
山行記録まとめ
活動時期
2018/10/21(日) 09:40~16:52
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