
山登りを始めたばかりの頃、登山ウェアを見に登山用品専門店に行ったときのこと。
まず、登山ウェアにぶら下がっているタグの数の多さに驚き、そしてそれらのタグに表示されている機能に驚き・・・
とにかく驚きの連続でした。
普段、洋服を買うときに見るのは、デザインやカラー、サイズ、素材、肌触り、着心地、そして値段などですが、登山ウェアを買うときには、それらにプラスして機能を最重要視しなければなりません。
街で着る洋服なら、多少汗をかいても、暑ければ脱いでしまえばいいし、寒ければ上着を羽織ればいい。
でも、山ではそう簡単にはいきません。
登山中は、歩いているうちに汗をかいたり、休憩すると急に寒くなったり、標高が上がるにつれて気温が下がったり、突然雨や風にさらされたり・・・。
同じ一日の中でも、ウェアに求められる役割がどんどん変化していきます。
しかも、山では「ちょっと寒いな」「服が濡れてきたな」という状態をそのまま放置してしまうと、体温を奪われて体調を崩す原因になることも。
だからこそ、登山ウェアは単に「暖かい服」「雨を防ぐ服」というだけではなく、汗・雨・風・気温の変化から身体を守りながら、体温を適切に調節するための道具として考える必要があるんですね。
今回は、登山ウェアに求められるいろいろな機能についてまとめてみました。
あわせて、山登りに山専用のウェアが必要な理由について、改めてしっかりと確認していきたいと思います。
登山ウェアの機能いろいろ
まずは、登山ウェアに必要な機能を一覧にまとめてみますね。
| 吸汗 | 汗を素早く吸い上げて、身体の表面をできるだけ乾いた状態にする |
|---|---|
| 透湿 | 吸い上げた水分をスムーズに通過させ、外に放出しやすくする |
| 速乾 | 繊維内に水分を留まらせないようにして乾燥しやすくする |
| 保温 | 繊維の層で身体の熱が外部に逃げないようにする |
| 冷却 | 透湿速乾の機能をさらに高め、肌に触れる部分に清涼感をもたせる |
| 防臭 | 繊維に特殊な処理を施し、汗による雑菌の増殖を抑える |
| 防水 | 雨や雪など外部からの水分が内部に浸透しないようにする |
| 防風 | 内部に風が入ることを遮り、体温が奪われるのを防ぐ |
| 撥水 | 素材の表面で水分をはじき、内部に侵入するのを防ぐ |
こうして並べてみると、登山ウェアには本当にたくさんの機能があることが分かりますよね。
そして、これらの機能はそれぞれ単独で働くというよりも、組み合わせて使うことで効果を発揮するもの。
たとえば、汗をかいたときに「防水機能」だけが優れていても、ウェアの中に湿気がこもってしまえば快適とはいえません。
逆に、汗を素早く外へ逃がす機能があっても、雨や風を防げなければ、天候が崩れたときに身体が濡れてしまいます。
つまり、登山ウェア選びでは「この機能が一番優れているものを選べばOK!」というよりも、その日の山行や季節、天候に合わせて必要な機能を組み合わせることが大切なんですね。
登山ウェアの基本はレイヤリング。
効果的なレイヤリングのためには、ベースレイヤー、ミドルレイヤー、アウターレイヤーという、それぞれのレイヤーに必要な機能を選んで、それらを適切に組み合わせていく必要があります。
出典:モンベル
レイヤリングのポイントは、最初から「分厚くて暖かい服」を一枚着ることではありません。
汗をかいたら汗を逃がし、寒くなったら保温し、雨や風が強くなったら外からの水分や冷気を防ぐ。
そのときどきの状況に合わせてウェアを脱ぎ着することで、体温を調節しやすくするわけですね。
ベースレイヤーに必要な機能
- 吸汗
- 透湿
- 速乾
- 保温・冷却
- 防臭・消臭
下着などのアンダーウェアやTシャツ、タイツやソックスなど、肌に直接触れるのがベースレイヤー。
肌に直接触れる分、山での安全性や快適性に大きく関わってきます。
ベースレイヤーに必要な機能は、生地が肌に触れる部分に汗の水分が留まらないようにする機能。
汗をスムーズに吸収してすぐに発散する生地であれば、体温調節をスムーズに行うことができます。
登山中は、歩いているときには暑く感じるのに、立ち止まって休憩した途端に汗が冷えて寒くなる、ということがあります。
これは登山初心者が経験しやすい「汗冷え」のひとつ。
そのため、ベースレイヤーは単純に「暖かければいい」というものではなく、汗をかいたときに身体を濡らしたままにしないことがとても重要なんですね。
以上のことから、ベースレイヤーに必要な機能は吸汗・速乾機能。
そのほか、状況に合わせて保温・冷却する機能が必要な場合もあるでしょう。
また、山小屋泊やテント泊など、汗による臭いを軽減するために防臭・消臭機能があるとなお快適ですね。
ベースレイヤーは季節によって使い分ける
ベースレイヤーは、一年中同じものを着ればいいというわけではありません。
暑い時期なら、汗を素早く逃がしてくれる薄手のものや、清涼感のあるもの。
気温の低い時期なら、汗を逃がしながら身体を冷やしすぎない保温性のあるもの。
というように、季節や山域、標高に合わせて選ぶことが大切です。
特に注意したいのが綿素材の扱い。
普段着としては肌触りがよく快適な綿素材ですが、汗や雨などで濡れると乾きにくく、山では汗冷えにつながることがあります。
普段の洋服と登山ウェアでは、同じ「着心地がいい」という感覚でも、求められる性能が違うんですね。
ミドルレイヤーに必要な機能
- 透湿
- 速乾
- 保温
ベースレイヤーとアウターレイヤーの中間着で、幅広い気温差に対応するためのポイントとなるのがミドルレイヤー。
ミドルレイヤーも、ベースレイヤーと同じ理由で、水分を素早く放出する機能が必要です。
ミドルレイヤーは、季節や気温、天候など、さまざまな状況に対応しなければならないので、熱を逃がさないように保温する機能も必要です。
代表的なものとしては、フリースや薄手のダウン、化繊のインサレーションウェアなどがあります。
どれを選ぶかは、季節や山行スタイルによって変わってきます。
たとえば、夏の高山で少し肌寒いときなら薄手のフリースなど。
春や秋、標高の高い山など、より保温性が必要になる場合はダウンや化繊の保温着をプラスするなど、状況に合わせて調節します。
ミドルレイヤーは「寒いから着る」というだけではなく、行動中と休憩中で着たり脱いだりすることも重要。
登りで暑くなってきたら脱ぎ、山頂や休憩中に身体が冷えてきたら着る。
このようにこまめに調節することで、汗をかきすぎることを防ぎながら、身体を冷やさずに済みます。
アウターレイヤーに必要な機能
- 透湿
- 防水
- 防風
- 撥水
レイヤリングの一番外に着る登山ウェアが、アウターレイヤー。
外からの雨や風の影響が中に及ばないように、防寒着、防風着、そして雨天時のレインウェアの機能を兼ねた機能が必要です。
山では天気が急変することも珍しくありません。
晴れているから大丈夫だと思っていても、標高が上がるにつれて風が強くなったり、突然雨が降ってきたりすることがあります。
そんなときに身体を守ってくれるのがアウターレイヤーです。
アウターレイヤーに理想的な素材として“ゴアテックス”がありますが、これは外からの雨や風を防ぎ、中の湿気を外に放出させる機能をもっています。
出典:モンベル
レインウェアの場合は、雨を防ぐ防水性だけを見てしまいがちですが、登山では透湿性も重要。
雨が降っていなくても、歩いていれば身体から汗や水蒸気が発生します。
その湿気をウェアの外へ逃がすことができれば、ウェア内部が蒸れにくく、より快適に行動できます。
また、山では風も大敵。
同じ気温でも、風が強くなると体感的に寒く感じます。
そのため、風を防ぐことも体温を守るうえで重要なポイント。
特に稜線など、風を遮るものが少ない場所では、アウターレイヤーの防風性が大きな役割を果たします。
「防水」と「撥水」は違う?
登山ウェアを選んでいると、「防水」と「撥水」という言葉が出てきます。
どちらも水を防ぐための機能ですが、意味は少し違います。
撥水は、素材の表面で水をはじく機能。
一方、防水は、雨などの水がウェアの内部まで浸透するのを防ぐ機能です。
そのため、撥水加工がされているウェアだからといって、必ずしも雨を完全に防げるわけではありません。
本格的な雨の中で行動する場合には、防水性を備えたレインウェアなどを用意することが重要です。
登山ウェアは「重ね着」で調節する
ここまで見てくると、登山ウェアがなぜ何枚も必要なのか、少し分かってきますよね。
「暑いから薄着」
「寒いから厚着」
という単純な考え方ではなく、
汗を逃がす → 保温する → 雨や風を防ぐ
というそれぞれの役割を持ったウェアを重ね、状況に応じて調節する。
これがレイヤリングの基本です。
例えば、登り始めは寒かったのでミドルレイヤーを着ていたけれど、登っているうちに暑くなってきた。
そんなときは、汗だくになるまで我慢するのではなく、早めにミドルレイヤーを脱いで体温を調節します。
逆に、山頂で休憩するときには身体が冷えやすくなるので、脱いでいたミドルレイヤーを再び着る。
さらに風が強ければアウターレイヤーを重ねる。
このように、「暑くなる前に脱ぐ」「寒くなる前に着る」くらいの感覚でこまめに調節することが、快適な登山につながります。
山専用のウェアが必要な理由

普段着でも山に登れそうなのに、どうしてわざわざ登山用のウェアが必要なの?
山登りを始めたばかりの頃は、そんな疑問を持つ人もいると思います。
わたしも最初は「スポーツウェアでもいいんじゃない?」くらいに思っていました。
でも、登山ウェアについて調べれば調べるほど、山専用のウェアにはちゃんと理由があることが分かってきました。
登山は、長時間にわたって身体を動かし続けます。
しかも、平地ではそれほど気にならない風や雨、気温の変化が、標高の高い山では大きな影響を及ぼします。
だからこそ、登山ウェアには「動きやすさ」「汗を逃がす」「体温を守る」「雨や風から身体を守る」という、複数の役割が求められるんですね。
普段着のように「おしゃれだから」「暖かそうだから」だけで選ぶのではなく、山の環境の中で自分の身体を守れるかどうかを考える。
これが登山ウェア選びの大きなポイントなのだと思います。
登山ウェア選びでは「タグ」をチェック!
登山用品専門店に行くと、ウェアにたくさんのタグが付いていることがあります。
山登りを始めたばかりの頃は、「何が何だか分からない・・・」となってしまいますが、今回見てきたような機能を知っておくと、タグを見るのも少し楽しくなってきます。
「これは速乾性が高いからベースレイヤー向きかな?」
「これは防水性と透湿性があるから雨の日に使えそう」
「このフリースはミドルレイヤーとして使えそう!」
など、自分の登山スタイルに合わせて考えられるようになると、ウェア選びがぐっと面白くなりますよね。
そして、機能が多ければ多いほど良いというわけでもありません。
夏の低山と冬の高山では必要な機能が違いますし、日帰り登山とテント泊でも求められる性能は変わります。
「いつ、どこで、どんな山に登るのか」を考えたうえで必要な機能を選ぶことが大切です。
さまざまなデザインやカラーがあり、おしゃれも楽しみたい登山ウェアですが、最優先すべきは登山ウェアとしての機能。
必要な機能を上手に組み合わせて、安全で快適な山登りにしましょう!

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