
「山頂で淹れたての美味しいコーヒーを飲む!」
いわゆる“山頂コーヒー”が、山登りの楽しみになっている人も多いのでは?
コーヒー独特のあの香り、本当にたまらないですよねー。
山頂に到着して、ザックからコーヒーセットを取り出し、お湯を沸かして、ゆっくりドリップ。
目の前には山の景色が広がっていて、そこで飲む一杯は、普段自宅で飲むコーヒーとはまた違った美味しさがあります。
「この一杯のために山に登っている!」という人がいても、全然不思議ではありません。
ですが、山登りといえども、体を動かす“運動”であることに変わりありません。
果たして、登山中のコーヒーは運動に適した飲み物なのでしょうか?
今回は、憧れの山頂コーヒーが登山中の体に与える影響について、メリット・デメリットをまとめてみようと思います。
コーヒーは運動に適する?適さない?

コーヒーに含まれている成分としてあまりにも有名なカフェイン。
このカフェインが筋肉に作用し、運動能力を高めてくれることがよく知られています。
実際、カフェインは運動パフォーマンスについてかなり研究されている成分で、持久系運動を含め、さまざまな運動でパフォーマンスを向上させる可能性が報告されています。([SpringerLink][1])
登山も、何時間にもわたって歩き続けることのある持久系の運動。
そう考えると、カフェインを含むコーヒーは、登山との相性がそれほど悪い飲み物ではなさそうです。
また、カフェインには「疲労感を感じにくくする」という働きもあります。
長時間歩いていると、身体そのものが疲れてくるだけではなく、「疲れたなー」「もう歩きたくないなー」という感覚も強くなってきますよね。
カフェインはこうした主観的な疲労感や運動時のつらさを軽減する方向に働くことがあり、これも運動時に利用される理由のひとつです。([SpringerLink][1])
ただし、ここで勘違いしてはいけないのが、コーヒーを飲めば体力そのものが増えるわけではないということ。
あくまでもカフェインによって疲労感が軽減されたり、運動パフォーマンスが向上したりする可能性がある、という話です。
「コーヒーを飲んだから今日はいつもより無理して歩いても大丈夫!」
というわけではありません。
登山では、体力や天候、コース状況を考えながら、無理のないペースで歩くことが基本です。
それから、コーヒーと脂肪燃焼についてもよく知られています。
カフェインには脂肪の利用を促す作用があるため、「コーヒーを飲めば脂肪がどんどん燃える!」というイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。
確かに、カフェインは脂肪酸の動員や脂質の利用に関係しますが、だからといってコーヒーを飲むだけでダイエットできるわけではありません。
登山そのものがかなりの運動量になるので、コーヒーの脂肪燃焼効果だけを目的にするのではなく、「運動中のカフェイン摂取によってパフォーマンスをサポートできる可能性がある」くらいに考えておくとよさそうですね。([SpringerLink][1])
それから、コーヒーと紫外線のこんな意外な関係も最近分かってきました。
全日本コーヒー協会の報告によると、コーヒーには、紫外線による皮膚の炎症を抑えてくれる働きがあるんだとか。
強い紫外線にさらされる登山中にはぴったりの飲み物かもしれませんね。
ただし、コーヒーを飲んだからといって日焼け止めや帽子などの紫外線対策が不要になるわけではありません。
標高が高くなるほど紫外線の影響も受けやすくなるので、登山では日焼け止めを塗ったり、帽子やサングラスを利用したりするなど、基本的な紫外線対策をしっかり行いたいところです。
メリット- 運動能力を高める可能性がある
- 疲労感を軽減する可能性がある
- 脂肪の利用を促す作用がある
- 紫外線による皮膚への影響について研究されている
登山中はコーヒーを飲まない人も・・・

山頂でのコーヒーに憧れ、山登りのモチベーションとしている人がいる一方で、「登山中はあえてコーヒーを飲まない!」という人がいるのも事実。
それは一体どうしてかというと、コーヒーにはこんなデメリットがあるからなんです。
デメリット- 利尿作用がある
- お通じが良くなることがある
- 人によっては胃腸に負担を感じることがある
- 飲む時間によっては睡眠に影響することがある
上記の2点は、一見するとコーヒーのメリットとも言えるものですが、これが登山中となると話は違ってきますよね。
トイレのない山の中では、トイレが近くなってしまったり、おなかがゆるくなってしまったりは避けたいもの。
もちろんこれは、体質に左右されるところも大きいので一概には言えませんが、コーヒーにはこんな作用もあるということを頭に入れておくといいかもしれませんね。
コーヒーを飲んだら脱水症状になる?
コーヒーについて語るときに、よく出てくるのが「カフェインには利尿作用があるから、飲むと脱水するのでは?」という話。
確かにカフェインには利尿作用があります。
ただ、普段からコーヒーなどのカフェイン飲料を飲み慣れている人が、通常量のカフェインを摂取したからといって、それだけで運動中に脱水状態になるとは限りません。
実際、アメリカスポーツ医学会(ACSM)の解説でも、運動中のカフェイン摂取が水分バランスを悪化させるとは限らないとされています。([ACSM][2])
なので、
「コーヒーを飲んだら、その分だけ身体から水分が失われる!」
と単純に考える必要はありません。
とはいえ、登山では汗などによって別途水分を失います。
ここが重要。
コーヒーだけを飲んで「水分補給できた!」と思うのではなく、登山中は基本的に水やお茶、電解質を含む飲料などを使って必要な水分を確保することが大切です。
特に夏場の登山では、コーヒーを飲む・飲まない以前に、汗によって大量の水分を失う可能性があります。
山頂コーヒーを楽しむ場合も、「コーヒーはコーヒー、水分補給は水分補給」と分けて考えておくと安心ですね。
コーヒーを飲むなら「トイレ問題」も考えておこう

登山中にコーヒーを飲む場合、個人的に一番気になるのがトイレ問題。
コーヒーを飲むとトイレに行きたくなる、という人は少なくありません。
特に、
- コーヒーを飲むとすぐトイレに行きたくなる
- 朝にコーヒーを飲むとお通じがよくなる
- カフェインに敏感
というタイプの人は注意したいところ。
登山道には当然、自宅のようにいつでもトイレがあるわけではありません。
登山口や山小屋にはトイレがあっても、稜線上や樹林帯の途中ではトイレが見つからないこともあります。
「山頂でコーヒーを飲んだら、下山途中で急にトイレに行きたくなった……」
なんてことになったら、せっかくの楽しい山歩きがちょっとしたサバイバルになってしまいます。
もちろん、コーヒーを飲んだから必ずトイレが近くなるわけではありません。
個人差がかなり大きいので、普段からコーヒーを飲んでいる人なら、自分がどんな反応をするのかを知っておくことが大切です。
カフェインで眠れなくなることも
もうひとつ、登山で忘れてはいけないのが睡眠への影響。
日帰り登山ならそれほど問題にならないかもしれませんが、山小屋泊やテント泊の場合は注意したいところです。
せっかく山小屋に泊まるのに、夕方に飲んだコーヒーのせいで眠れない……なんてことになったら残念ですよね。
特に、翌朝が早朝出発の場合は睡眠不足がそのまま翌日の登山に影響する可能性があります。
カフェインへの反応には個人差がありますが、「夕方以降にコーヒーを飲むと眠れなくなる」という人は、山でも無理にコーヒーを飲まないほうがいいでしょう。
どうしても夜にコーヒー気分を味わいたいなら、カフェインレスコーヒーを利用するという方法もあります。
山小屋で「コーヒーを飲みたいけど、明日の朝が早い……」というときにも、選択肢のひとつになりそうですね。
空腹でコーヒーを飲むのはどう?
登山中は、コーヒーを飲むタイミングも考えておきたいところ。
長時間歩いていると、エネルギーをたくさん消費します。
そんなときにコーヒーだけを飲んで、「これで休憩はOK!」としてしまうのはおすすめできません。
コーヒーにはカフェインが含まれていますが、登山中に必要なエネルギーを十分に補給できる飲み物ではありません。
特に長時間の登山では、
コーヒー+行動食
という組み合わせがおすすめ。
例えば、山頂でコーヒーを淹れるなら、羊羹やチョコレート、パン、ナッツなどを一緒に持っていけば、エネルギー補給もできます。
「山頂コーヒーを飲みながら甘いものを食べる」
なんて、かなり幸せな休憩になりそうですね!
山頂コーヒーは登山のご褒美として楽しむのがおすすめ

ここまで見てくると、コーヒーには登山にとってメリットもデメリットもあることが分かります。
カフェインによって運動パフォーマンスをサポートできる可能性がある一方、トイレが近くなったり、胃腸に合わなかったり、睡眠に影響したりする人もいます。
つまり、
「コーヒーは登山に良い?悪い?」
と一概に決めることはできません。
その人の体質や、飲む量、飲む時間、登山のスタイルによっても変わってきます。
個人的には、登山中のコーヒーを「水分補給のための飲み物」と考えるよりも、山頂でのご褒美として楽しむのがちょうどいいのではないかなと思います。
水分補給は水などでしっかり行って、エネルギー補給は行動食で。
そして、山頂に到着したらコーヒーを淹れて、ゆっくり味わう。
これなら、コーヒーそのものを登山の楽しみとして満喫できますよね。
山頂コーヒーを楽しむために準備したいもの
せっかく山頂でコーヒーを淹れるなら、道具選びも楽しみたいところ。
例えば、
- コーヒー豆や粉
- 小型のコーヒーミル
- ドリッパー
- フィルター
- クッカーやケトル
- バーナー
- ライターなどの着火具
- マグカップ
など。
もちろん、全部持っていく必要はありません。
「山ではできるだけ軽くしたい」という人なら、挽いたコーヒー豆と簡易ドリッパーだけでも十分楽しめます。
最近では、1杯分のコーヒー粉が入ったドリップバッグもあります。
お湯を沸かして、カップにセットして注ぐだけなので、荷物を軽くしたい日帰り登山にもぴったり。
一方で、「山頂で豆を挽くところから楽しみたい!」という人なら、ミルを持っていくのもいいですよね。
山頂でゴリゴリと豆を挽いている時間そのものが、すでに山ごはんならぬ「山カフェ」の時間。
風が強い山頂では火の扱いに注意

山頂でコーヒーを淹れる場合、当然ながらお湯を沸かすために火を使うことがあります。
ここで忘れてはいけないのが火の扱い。
山頂や稜線は風が強いことも多く、バーナーの火が安定しなかったり、炎が横に流れたりすることがあります。
また、山域や公園、山小屋周辺などでは火気の使用についてルールが定められている場合もあるので、事前に確認しておきたいところ。
風が強いときや、周囲に燃えやすいものがある場合には、無理に調理をしないという判断も大切です。
「どうしても山頂で淹れたてコーヒーを飲みたい!」
という気持ちは分かりますが、安全第一。
場合によっては、山小屋や指定された場所で楽しむほうが安心ですね。
登山中のコーヒーは「自分の体質」を知っておくことが大切
コーヒーに限った話ではありませんが、登山では普段飲み慣れていないものをいきなり試さないことも大切です。
例えば、普段コーヒーを飲まない人が、
「今日は長時間歩くから、カフェインで元気を出そう!」
と、登山中に突然濃いコーヒーを何杯も飲むのは避けたいところ。
カフェインへの反応には個人差がありますし、動悸や胃の不快感、不眠などが気になる人もいます。
新しい飲み物や食べ物を試すなら、まずは普段のハイキングなどで試してみる。
「この量なら大丈夫」
「この時間なら眠れる」
「これくらいならトイレも問題ない」
という自分なりの感覚をつかんでおけば、本番の山行でも安心です。
コーヒーが苦手なら無理に飲まなくてもOK
ここまでコーヒーのメリット・デメリットについていろいろ書いてきましたが、もちろんコーヒーが苦手なら無理して飲む必要はありません!
山頂で飲むものは、コーヒーじゃなくてもいいんです。
紅茶でも、ココアでも、スープでも、お茶でも。
「山頂で温かい飲み物を飲む」という行為そのものが、登山の楽しみになります。
特に寒い時期の登山では、温かい飲み物を飲むだけでホッとしますよね。
自分の好きな飲み物をザックに入れて、「山頂で何を飲もうかな?」と考えるところから楽しんでみるのもいいと思います。
まとめ
「山頂で淹れたての美味しいコーヒーを飲む!」
これは、登山の楽しみのひとつとしてかなり魅力的ですよね。
コーヒーに含まれるカフェインには、運動パフォーマンスを高めたり、疲労感を軽減したりする可能性があり、運動との相性が悪い飲み物というわけではありません。([SpringerLink][1])
一方で、
- トイレが近くなることがある
- 胃腸に合わないことがある
- 睡眠に影響することがある
- 水分補給の代わりとして考えないほうがいい
など、登山中だからこそ気をつけたいポイントもあります。
特に、長時間の登山やテント泊、山小屋泊では、「飲むタイミング」と「飲む量」が大切。
そして、コーヒーを飲んだからといって、無理をして歩けるわけではありません。
疲れているときはしっかり休み、水分や行動食を補給する。
体調が悪いときは無理をしない。
そのうえで、体調に問題がなければ、山頂でゆっくりコーヒーを楽しむ。
そんな付き合い方がちょうどいいのではないでしょうか。
山頂でお湯を沸かして、コーヒーの香りがふわっと広がって、目の前には絶景。
「この一杯のために登ってきた!」
と思える瞬間って、きっと最高ですよねー。
コーヒー好きの人はもちろん、普段あまりコーヒーを飲まない人も、次の山ではお気に入りの飲み物を一杯、ザックに忍ばせてみてはいかがでしょうか?

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