
雪山登山と聞くと、アイゼンやスノーシューなど、特別な装備が必要なのではないかと構えすぎていた以前のわたし。
ですが、雪山の状況によっては軽アイゼンすら必要ない、ツボ足可能な山もあるんですよね。
ただし、「ツボ足で歩ける=どんな雪山でも安全」というわけではありません。
雪の量や硬さ、斜面の傾斜、気温、天候によっては、ほんの少し歩いただけでも足が沈み込んだり、逆に雪面がカチカチに凍って滑りやすくなっていたりします。
今回は、軽アイゼンなしでの雪山登山、ツボ足で山登りをする場合の上手な歩き方についてお伝えします!
ツボ足とは?
・・・と、その前にツボ足という登山用語の説明から始めますね。
ツボ足とは、雪の上をアイゼンやスノーシューを装着せずに歩くこと。
降り積もった新雪の上を歩いた場合、壺状の足跡ができることが語源のようです。

夏山では当たり前のように歩いている登山道も、雪が積もるとまったく違う道に見えることがあります。
雪が少なく締まっている場所では、登山靴だけでも比較的歩きやすい一方、雪が深い場所では足がズボッと沈み込んでしまうことも。
この「沈み込み」がツボ足の大きな特徴です。
一歩ごとに雪に足を取られると、思っている以上に体力を消耗します。
登りで足が深く沈み込むと、太ももを大きく持ち上げながら歩くことになるので、夏山とは比べものにならないくらい疲れることもあります。
また、雪の状態は同じ登山道でも場所によって変わります。
日当たりのいい場所は雪が柔らかく、日陰は凍っている。
朝はカチカチだった雪が、気温が上がる午後には柔らかくなる。
・・・なんてことも珍しくありません。
なので、「今日はツボ足で大丈夫」と思って出発しても、途中から状況が変わる可能性があります。
雪山では、最初から「軽アイゼンは絶対に使わない!」と決めてしまうのではなく、雪の状態を見ながら必要な装備を使うという柔軟な考え方が大切ですね。
ツボ足で雪の上を上手に歩くコツ

雪の上は、ふかふかと軟らかいときもあれば、硬く締まって滑りやすくなっているときもあり、その状態はさまざま。
ですが、どんな雪質のときでも安定する雪上歩行の基本は、雪を踏み固めながら歩くことです。
雪面にふわっと足を置くのではなく、体重をかけるようにしっかりと踏み込んで歩くことを意識します。
効率的に踏み込むコツは、足を置いたら垂直方向に立ち上がること。
重心を安定させるために、胸を張って真上に立ち上がるようなイメージで、一歩一歩しっかりと歩いていきます。
そうすることによって、足元の雪が崩れにくくなり、歩きやすくなるんだそう。
雪の上では、普段の登山のように大股で歩くよりも、歩幅を小さくして一歩ずつ確実に足場を作ることも大切です。
大きく足を出すと、足元の雪が崩れたり、体のバランスを崩したりしやすくなります。
「急いで進む」よりも「次の一歩を確実に置く」。
これくらいの気持ちで、ゆっくり歩くほうが結果的に疲れにくいんですよね。
また、足元ばかりに意識を集中させすぎないことも大切。
雪山では踏み跡が消えていることもありますし、登山道そのものが雪に覆われていることもあります。
足元を確認しながらも、定期的に地図や周囲の地形を確認して、自分がどこを歩いているのかを把握するようにしましょう。
効率的に歩くためには、雪の上に残っている先行者のトレースを利用するのもひとつの方法です。
すでに踏み固められた場所であれば、自分で雪を踏み固める必要がないので歩きやすくなります。
ただし、トレースがあるからといって必ずしも正しいルートとは限りません。
先行者がルートを間違えている可能性もありますし、雪の状態が変化している可能性もあります。
地図や登山道の状況と照らし合わせながら利用するようにしたいですね。
また、登りの場合は斜面につま先をけり込むように(=キックステップ)、下りの場合は斜面にかかとをぐっと沈めるようにするとグリップが効きやすくなります。
キックステップとは?
雪がある斜面を登る場合、基本となる歩き方はキックステップと呼ばれるもの。
キックステップとは、つま先、またはかかとでけり込むように進んでいく歩き方のことです。
雪の斜面を登るときには、靴の裏を斜面にベタッと置こうとするのではなく、つま先を雪面にしっかりとけり込ませ、足場を作りながら登っていきます。
このとき、一度で深くけり込もうとするのではなく、雪の硬さを確かめながら足場を作ることがポイント。
柔らかい雪なら比較的簡単に足場を作れますが、硬く締まった雪では、トレッキングシューズだけでは十分なグリップを得られないことがあります。
トレッキングシューズのソールが柔らかかったり、雪が硬かったりなど、十分なけり込みができないときは軽アイゼンを装着するようにします。

「ツボ足で歩けるかどうか」は、雪の深さだけでなく、雪面の硬さや斜面の傾斜によっても判断する必要があります。
平坦な場所では問題なく歩けても、急斜面に入った途端に滑りやすくなることもあります。
そのため、登山口では大丈夫そうに見えても、斜面の状況を見て途中で軽アイゼンに切り替えるという判断も大切です。
雪がある斜面の下りは、登りよりはるかに滑りやすくなるので要注意です。
ツボ足で下るときの原則は、かかとでけり込みながら歩くこと。
足裏をフラットに置き、つま先がやや上がるようにするのがポイントのようです。
下りでは、怖いからといって腰を引きすぎると、かえってバランスを崩しやすくなります。
できるだけ重心を安定させ、足元を確認しながら小さな歩幅でゆっくり下るようにします。
雪面が硬く、かかとを十分に沈められない場合は、無理にツボ足で下らないこと。
「登れるから下れる」とは限らないのが雪山の怖いところなんですよね。
ツボ足で歩くときに注意したいこと
ツボ足は、軽アイゼンなどの装備を必要としないという意味では手軽ですが、だからといって夏山と同じ感覚で歩けるわけではありません。
むしろ、雪の状態を見極める必要があるので、夏山以上に慎重な判断が必要になることもあります。
特に注意したいのが、踏み抜きです。
雪の表面は硬そうに見えても、その下が空洞になっていたり、柔らかい雪が隠れていたりすることがあります。
その上に体重をかけた瞬間、片足がズボッと深く沈み込んでしまうことも。
踏み抜くと足を取られて転倒するだけでなく、膝や足首を痛める原因にもなります。
また、雪が深くなるほど歩行による体力消耗も大きくなります。
「距離はそれほど長くないから大丈夫」と思っていても、雪の上では夏山と同じペースでは歩けません。
予定していたコースタイムより大幅に時間がかかることもあるので、余裕を持った計画が必要です。
さらに、雪山では日没後に急激に気温が下がることがあります。
ツボ足で思った以上に時間がかかってしまい、下山が遅くなることも考えられるので、ヘッドランプは必ず携行しておきたいですね。
トレッキングポールがあると安心!

夏山登山では、場合によっては邪魔になりがちなトレッキングポールですが、雪山登山ではあったほうが快適に歩くことができます。
雪の上では足元が不安定になりやすいので、トレッキングポールを使って四点で体を支えるようにすると、バランスを取りやすくなります。
特に下りでは、滑りやすい雪面で体を支える補助として役立ってくれます。
トレッキングポールは、夏山登山で使っているものの流用で問題ありません。
ただし、その場合、トレッキングポールの先についているバスケットと呼ばれる円盤状の部品を、面積が大きい雪山用のもの(=スノーバスケット)に交換しましょう。
夏山用の小さいバスケットだと、雪に沈んでしまうからです。
出典:モンベル
雪面にポールを突いたとき、先端がズブズブと沈んでしまうと、せっかくのポールの支えが効きにくくなります。
スノーバスケットに交換するだけでも、雪の上で使いやすくなりますね。
雪の状態を見て装備を使い分ける
ツボ足で歩ける雪山に行く場合でも、軽アイゼンなどを「絶対に持っていかない」というのはおすすめできません。
雪の状態は、同じ山でも日によって大きく変わります。
前日に降雪があったのか、気温が上がったのか、朝晩に冷え込んだのかによって、同じ登山道でも歩きやすさはまったく違ってきます。
特に、
- 斜面が急になってきた
- 雪面が硬くなってきた
- 足元が滑りやすくなってきた
- つま先やかかとを雪に十分にけり込めない
- 下りで足元が不安定になってきた
こんな状態になったら、無理にツボ足を続けないこと。
軽アイゼンなどが必要だと感じたら、早めに装着するほうが安全です。
逆に、アイゼンを装着しているからといって安心しきるのもNG。
装備はあくまで安全に歩くための補助なので、雪面の状態を確認しながら歩くことが基本になります。
ツボ足で行ける雪山から少しずつステップアップ
雪山登山というと、どうしても「アイゼンが必要」「スノーシューが必要」「冬山用の特別な装備が必要」と考えてしまいがち。
ですが、積雪量が少なく、雪の状態が安定していて、整備された登山道を歩くような山であれば、ツボ足で楽しめるケースもあります。
まずは雪の少ない低山などで、雪の上を歩く感覚を経験してみる。
雪が深くなったらどうなるのか、硬く締まった雪はどれくらい滑るのか、登りと下りではどちらが歩きにくいのか・・・。
実際に歩いてみることで、夏山とは違う雪山ならではの感覚が少しずつ分かってきます。
ただし、ツボ足で歩けるかどうかは「山の名前」だけでは判断できません。
同じ山でも積雪量や気温によって状況は変化します。
出発前には最新の登山道情報や天気予報を確認し、可能であれば現地の積雪状況や先行者の情報などもチェックしておきたいですね。
そして、少しでも「この雪は怖いな」「この斜面はツボ足では難しそう」と感じたら、引き返すことも立派な登山判断。
無理をして山頂に立つことよりも、安全に下山して「また次に来よう」と思えることのほうがずっと大切です。
以上、軽アイゼンなしでの雪山登山、ツボ足で山登りをする場合の上手な歩き方についてでした!
雪の上を歩くというだけで、いつもの登山とはまったく違う感覚を味わうことができます。
ふかふかの新雪を踏みしめながら歩いたり、静まり返った雪山の景色を楽しんだり・・・。
夏山とは違う魅力がたくさんあるのが雪山なんですよね。
まずは無理のない山から、雪の状態をしっかり確認しながら、ツボ足での雪上歩行を経験してみたいと思います!

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